深山の3 地元ラーメン
○ 昼時、食べたかった近所の中華屋(けっこうな繁盛店)に行ってみると思いがけず定休日だったので、よその店を考えてみるのだが、どうも適当な店が思い当たらない。
○ ので、渋々、その向かいにある別の中華屋「船橋イチバン」に入ることにした。
○ 家から歩いて30秒のところなのに、遠い昔に父親に連れられて来た記憶しかない。
○ 60過ぎのオバサンが一人で営む店で味も大したことなく、中国人コックが本格中華を出す向かいの店に比べると大きく引けを取るのだが、どういうわけか潰れることもなく今に至っても普通にノレンを出している。
○ 客が入っているところは、ほとんど見たことはない。
○ おいしい物しか食べたくない(@蓄殺)ので、こういう店に入るのには人一倍の勇気を要する方なのだが、もう腹が減って仕方なかったので、ハラを決めて入ることにした。
○ ガラーン
○ 寝癖のオバサンが店の奥からペタペタ出てきた。
○ 記憶のなかのしみじみした寂びれ具合を、一瞬で塗り替えるリアルな気まずさ。
○ 旅先で全く知らない町の店に入ったような錯覚にとらわれた。
○ ラーメンを注文すると、奥に麺を何玉か取りに行き、その後も何度か具を取りにいったり来たりしていて、微妙な手際の悪さが、不繁盛を物語っている。
○ 出てきたラーメンは取り立ててウマくもないが、決してまずくはなかった。
○ しっかし、この侘しさ、陰気さはどういうことだろう。客一人でも、立地が悪くても、ラー油瓶ベタベタでも、そんなのはどこの中華屋にもある事だ。オバサンも意外と愛想いいし、んー?
○ ナヌー!!
○ 電気がついてねえ!!!
○ 昼とはいえ、日の当たらない店内である。
○ 隅っこのTVが映す昼ドラが不自然にまぶしく、侘しさを引き立てている。
○ ラーメンをズルズルすすっていると、オバサンが電気もつけずにテーブルの上の醤油瓶に醤油を注ぎ足し始めた。
○ ズルズルズル ジョボボボボ ズルズル チョボボボボボ
○ 老後、孤独に暮らすガンダム老人は、持て余した時間をこういうところで潰して暮らすのだろうか。
○ 暗い店内で老婆と俺だけでいると、何となく自分も老人のように思われ、着ている服や、新しくした携帯電話なんかもとっくに時代遅れで、店の外では超ハイテクな22世紀が進行しているような想念にとらわれた。
○ 大きく鼻をかみ、代金を払って出ると、背後から突然ドモアリガトゴザイマス!と妙に元気な声が飛んできた。
○ 言い終えた後、店内には静寂が戻るのだろう。その静寂はいつまで続くのだろうか。
○ 今日はこんなところ。(パクリ)